民主政権誕生、「子ども手当」の実現性とその効果

8月30日の衆院選で歴史的勝利をおさめた民主党だが、国民の関心は早くも今後の国会運営に移っている。マニフェストの実現性、外交手腕、経験不足、小沢代行の影響(?)など、様々な憶測が飛び交っている。本記事では、マニフェストのひとつである子ども手当の実現性とその効果を分析してみたい。

民主党が掲げる「子ども手当」は、16歳未満の子供を対象に、1人当たり月額2万6000円、年額にすれば31万2000円を、年3回4カ月分ずつ支給す るというもの。 2万6000円という金額は、こども未来財団や中央教育審議会の調査を元に民主党が独自に算出した。0歳から14歳までの食費、洋服代などの生活費や保育料、授業料などの学費の平均額から割り出した「子供が育つためにかかる費用」の月額2万5000円余りが根拠となっている。子ども手当の年間予算案は、事務費も含めると約5兆6000億円。財源は「予算の総組み替えで、子ども手当は初めに確保する。どこかを削って付け替えるわけではないから心配はない」(民主党政調)とはいうが…。

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増税前提の政策、高所得者も恩恵などと批判があるが、筆者の考えでは、「子ども手当」は必ず実施すると読んでいる。その理由は3つある。ひとつは、今回の選挙戦で大々的に「子ども手当」をうたってきた民主党、まさかいきなりの政権出発でこけるわけにはいかないからである。2つ目は、実施にあたって2010年度は半額支給から始める予定であり、この財源は、配偶者控除廃止、21年度補正予算の見直し、そして無駄遣いの排除から確保できる見込みがあるからである。3つ目は、増税もしくは国債の発行といった切り札を持っているからである。

それでは、「子ども手当」が実現すればその効果はどのくらいだろうか。

gn-20090729-12「外食代」を節約中の主婦は7割にのぼり、「食費」6割、「被服費」5割と続きます(複数回答)。 女性のプチ贅沢や衝動買いが多い食・衣分野は、 自由回答にあるように「必要な分だけ買う」「安売りに飛びつかない」など無駄・無計画を避けるだけで節約になり、生活水準に影響させずに節約できる分野といえます。

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反対に、お金をかけているトップ3は「教育費」「食費」「医療、保険費」です(単数回答)。 理由(自由回答)はいずれも「大事なことだから切り詰めるべきでない」が7~8割を占め、切り詰めによる悪影響が心配な教育・健康はお金をかけているといえます。 また、教育・食・医療ともに「子供のため」との理由も目立ち、自分の贅沢を控えても子供のための支出は確保する姿も浮かび上がります(ハー・ストリィ)。

この結果より、子ども手当は「教育費」において、早くも一定の市場効果があると考えられる。しかし、第一生命経済研究所によると、

もしも、子供1人に年額31.2万円の現金支給が行われると、その規模は日本全体でどのくらいになるだろうか。2008年10月の15歳以下人口1,836.7万人で乗じると、年間5.7兆円と、名目GDP比1.2%にも及ぶ。現状での教育関連費の支出規模が、1世帯2.0万円×3,461万世帯=8.3兆円というスケールに比べても、子供手当ての需要創出規模がどれだけ巨大化が推し量られる。
しかし、それが需要創出効果として大規模であっても、中長期的に、生産力の増加に寄与するかどうかについては慎重に考えねばならない。すなわち、教育産業は、若年人口(未成年)が減少を続けている影響で、長期間にわたって市場全体が縮小傾向を余儀なくされているからだ。市場の成長は、その分野で生産性向上が起こって、供給能力と需要が相乗効果を持って膨張していく必要があるが、子供手当てによってそうしたプロセスがすぐに起こるとは考えにくいからだ。子供手当ては、教育分野が成長市場になるかどうかとは異質の問題のように思える。

とある。選挙戦で期待が高まる学習塾株でお伝えしたように、選挙期間中いやその前から、学習塾関連の株価は上昇している。株価とは、未来への期待値であるから、今回の民主政権への期待の大きさがうかがえる。それには、民主党が「子ども手当」を本気で少子化対策に位置づけ、人口減少問題に取り組む必要があるだろう。しかし、人口減少に歯止めがかからず少子化が続く限り、今回の「子ども手当」も成長市場という観点では、単なる人気取りのバラマキであり、市場にとって焼け石に水に成りかねない。

引用

民主党の政権政策

産経新聞 こども手当はイバラの道…らしい「得する者あれば、損する者あり」

ハー・ストーリィ 「今ドキ主婦のお財布事情」アンケート

第一生命経済研究所 子ども手当の経済分析

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2009学習塾M&A予報

業界(W480)

学習塾業界はM&Aで揺れ動く!

以下、8/17日経新聞からの抜粋である。

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栄光は8月17日引け後に、自己株式の公開買付(TOB)を行うと発表した。併せて発表した自己株式の取得の一環として行われるもので、資本効率の改善およびROEの向上を図る目的。

 

 

なぜ、ここにきて業界最大手の栄光がTOBなのかと思うかもしれないが、実は企業分析を進めていくと、あまり不思議なことでないことがわかる。栄光の事例も含め、学習塾業界のM&A傾向を探ってみたい。

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1.学習塾業界の企業規模特性

 

まず、学習塾業界が有する特性を探ってみる。

企業ごとの経営方針や環境にばらつきはがあるものの、売上が上がると収益率も上昇する傾向があり、特に個別指導の経常利益率は群を抜いている。この点から学習塾業界は内需型の産業であり、閉鎖されている市場もといえる。

今後、業界内での有利なポジションにシフトできるM&Aはもちろんのこと、ベネッセのように業界の壁を打ち砕き、鎖国解放をするM&Aも増えてくるだろう。

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2.教育サービス業界の企業規模特性

次は、学習塾業界を取り巻く教育サービス業界の特性を探ってみる。ここでは2通りの考え方にまとめた。

 

(1)異業種(教育サービス)からのM&A

現在のところ、ベネッセ、学研、Z会あたりに動きある。出版市場の低迷する教材会社、ゲーム市場の縮小と教育のIT化するゲーム会社などの提携・買収の面白い動きがあるかもしれない。

 

(2)外資ファンドからのM&A

業界再編が起こると必ずハイエナが近寄る。これは動物界だけの法則でなく、経済でも同様なことが日常茶飯事起きている。金融危機とハゲタカのイメージが付きまとうファンドだが、金を持っているところは虎視眈々とチャンスを狙っている。

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3.ROA-PBR

学習塾業界の上場企業のROA(総資本利益率)とPBR(株価純資産倍率)の相関から、企業価値ポジショニングを作成し分析した。

 

(1)優良企業群(高ROA・高PBR)

全業界のものさしに当てはめると学習塾の優良企業は少ない。唯一、ナガセがこれにあたるか。

 

(2)M&A対象の可能性がある企業群(低ROA・低PBR)

資産・投資効率よりも従来のP/L重視の短期・単眼志向型の経営スタイルをとっている会社。早稲田、アップ、昴、ウィザス、京進がこれに該当する。

 

(3)経営不振・再建中の企業群(低ROA・低PBR)

経営不振・再建中ゆえに企業体力不足がネックとなり、抜本的なリストラを断行できない企業。秀英予備校、市進、栄光、進学会、ワオ・コーポ、城南がこれに該当する。

なんと、栄光は、ROAとPBRの視点からだと、NG企業に属していたことになる。

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4.ROI-WACCマップ概念

 

資金の調達力を示すWACC(果汁平均資本コスト)と投資効率を示すROI(C)(投資収益率)を軸にグラフを作成すると、企業が調達面で課題があるのか、そもそも調達コストに見合うだけの正味のリターンが得られているのかが明らかになるとともに、企業が同業他社とのポジショニングがわかる。これを学習塾業界に適用してみる。

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まだ、学習塾業界では大手同士のM&Aの実例はないが、ROIC-WACCベースで作成したグラフからは、財務ベースでのその未来予測が可能である。事業力は高いが調達力に劣っているM&A仕掛け側の企業(明光、早稲田、リソー教育、ナガセ、東京個別)が、事業力が脆弱だが調達力が優れているM&A仕掛けられ側の企業(学究社、クリップ、市進、ワオ・コーポ、アップ、進学会、秀英予備校、昴、京進)を買収すれば、事業力も調達力も優れた優良企業に成り得る。

ROIC-WACCの視点では、栄光はなんとも微妙な位置にいる。

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財務面からのM&Aの可能性を探ってきたが、M&Aの成否は、企業文化がコラボできるかにかかっていることは言うまでもない。しかし、ほとんどのM&Aが、文化面を考慮することなく財務のみを指標にし失敗している。

だから、本記事の分析は、あくまでもそのような可能性があるかもしれないぐらいで受け止めてほしい。ただし、どの企業も仕掛けるも仕掛けられるもM&Aの可能性を秘めており、間違いなくこの動きは加速化するだろう。そして塾業界の枠を超えたM&A、ベネッセのような例やファンドの参入が起こるだろう。栄光もそのような環境化におかれ、苦渋の判断を迫れていたのではないだろうか。

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参考

ROIC = NOPAT / 投下資本
NOPAT = 営業利益 × (1−実効税率)
投下資本 = 純資産 + 有利子負債

WACC = D/(D+E) × rD × (1-税率) + E/(D+E) × rE
D:有利子負債総額 E:時価総額(または株主資本) rD:負債コスト rE:株主資本コスト

roic-wacc

 

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引用

業界内ポジションを考慮したM&A検討のすすめ

 

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豊かな国は「少子化」克服、日本は例外的

次世代(W480)

少子化について興味深い記事を見つけた。以下、読売新聞のからの抜粋である。

社会・経済が発展すると晩婚、出産の高齢化が進み、出生率は下がると考えられてきたが、発展がある段階を超えると、出生率は再び増加に転じる傾向にあることが、米ペンシルベニア大学などの分析で明らかになった。

この中で日本は出生率が上がらない例外的存在であることもわかった。6日付の英科学誌ネイチャーで発表する。20090806-156981-1-N

研究グループは、各国の生活の質と発展度合いを示す人間開発指数(HDI、最高値は1・00)と、1人の女性が生涯に産む子供の数を示す合計特殊出生率との関係について、1975年から2005年まで比較した。

調査対象は05年時点でHDIが0・85以上の日米欧など37か国。その結果、HDIが高くなるほど出生率は低下したが、HDIが0・85~0・90に達した段階で、出生率が逆に上昇する傾向があることがわかった。

例えば、米国は76年(HDI0・88)、イタリアは94年(同0・90)に、出生率が増加に転じた。この傾向の明らかな例外は日本、韓国、カナダだった。日本では05年にHDIが0・94まで上昇したが、出生率は1・26で過去最低になった。

HDIが特定水準を超えると出生率が上がることについて、同大のハンスペーター・コーラー教授は「発展に伴い、女性の働く環境や保育・教育施設が整備され、晩婚化や高い育児・教育費用などのマイナス面を補うから」と説明。

日本でも06年以降の出生率は3年連続で微増してはいるが、コーラー教授は「日本は明らかな例外。男女間格差や女性が働きにくい労働環境など、複数の要因が重なっている」と分析している。

◆人間開発指数=1人当たりの国内総生産や平均寿命、識字率、就学率から算出。国連開発計画も90年から毎年、発表している。

教室空間デザイン

プロ(W480)

これまで何度も、学習塾の商品は差異化がなく、泥沼化してきていると警告してきた。特に個別指導ビジネスにおいて、アルバイト学生に頼りきりであるために、授業レベルの向上は困難を極め、それが著しく商品価値の低下につながってきた。しかし、学習塾の商品は授業だけでなく、例えばその他に、顧客に対してアピールできる材料がある。それは、教材でもよいし、アフターサービスでもよいが、どの塾もこの辺を抜かりなく抑えており、なかなか他塾を圧倒するような商品に、滅多にお目にかかれないのが現実だ。どの塾も手がけてなく、顧客に対して訴求効果が高いものはないものだろうか。そのひとつの可能性として、店舗空間デザイン、塾でいえば教室空間デザインに注目してみたい。

日経アドネットに興味深い記事が連載されている。それは、日経MJとWEBとのクロスオーバー企画で、デザイナー小泉誠氏の「いつもの時代も愛される店舗づくりの秘訣とは?」である。以下、その抜粋である。

店舗は扱う商材により顧客とのコミュニケーションをはぐくみ、商いを成立させる場所だ。だからこそ店舗空間には、商材の価値を来店客に伝える機能が求められる。商材はモノや食などさまざまであり、表現方法も店舗を運営する人の考え方によって異なる。利益を最重要視する場合もあるだろう。また、新たに店舗を立ち上げた時には、初期投資の回収をなるべく短期でと考えることもあるだろう。その一方で、商材の価値をじっくりと伝えることに重きを置き、初期投資の回収においても10年などの長いスパンでとらえるという考え方もある。小泉誠氏は後者の考え方を大切にする。
「お店は自分の家にいるより長い時間を過ごす場所です。だからこそ、店舗には自宅のような居心地の良さが必要だと思います。そうであれば店舗空間もより大事にされるでしょうし、自宅に大切な人を招くように、お店にお客様をお迎えすることができるからです。品ぞろえも自然と自分が信頼できるもの、誇りの持てるものになるのではないでしょうか 」(小泉氏)
空間づくりは物理的な制約もあるが、自宅のように継続して使おうと思うと、仕切り方一つにしても深く考える。誕生から5年目を迎えたこいずみ道具店には今後も改装の予定はない。だからこそ、床の高さから一本の線に至るまですべてに意味があるという。また、商材の陳列にしても、単に棚に羅列するように並べるのではなく、その商材に最も適した生きた見せ方が自発的に生まれてくるのだと話してくれた。

この点において、学習塾は大幅に、他の業界に比べると遅れている。ほとんどの塾が、生徒を小さな教室に詰め込んだり、ブロイダーのように個別ブースに・・・。これはサービスとして、大きく欠落しているのではないだろうか。もっともっと塾は、子供に対して快適にわくわくするような勉強空間を、提供できないだろうか。いつでも子供が来たくなるような、学校や家庭にできない、非日常感を醸し出すような勉強の場を。数は少ないが、実際にそのような空間を持つ学習塾や試みがある。何点かご紹介したい。

まずは、店舗デザイン会社のエムアンドアソシエイツより「世界の子供たちの部屋」。『私たちの部屋のように世界の子供たちの部屋のように楽しくクリラックスして学べる私の部屋 「学び」「生きる力」「世界が広がる」世界にはばたく…』が、コンセプトだ。なんだか、わくわくしてくるのは、筆者だけだろうか。

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受け付けカウンター 証券取引所をイメージ

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パソコン教室入口 壁は世界の街並を表現している 色々な形の窓も楽しい

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パソコン教室 ブースごとに世界各国のグラフィックを

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多目的教室 床には世界地図グラフィック出力タイルを

次は、実在する千葉県にある個別指導塾。こちらは教室に、美容室のコンセプトを取り入れている。実際、本当に美容師がでてきそうだ。照明や色遣いの違いだけで(もちろん他に要素はあると思うが)、これだけ既存の塾と雰囲気が違うとは驚きだ。

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最後は、兵庫県にある代ゼミ。これ本当に予備校ですか?ホテルの間違いでは。ここまでくると、なんかある意味落ち着かないような気もするが・・・。トイレもすごい造りだ。

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受付け

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個別ベース

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自習スペース

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トイレ!

いくらデザイン性が高くても、肝心の商品(授業)がだめなら、どうなるか今更とやかく言う必要はないだろう。しかし、デザイン性が高ければ、顧客の琴線に触れる可能性は、間違いなく高まるだろう。例えば、ディスカウントストアのドンキホーテは、ご存じだろうか。この店のデザインは、ひと言でいうと下品極まりない。店は、黄色と黒のコントラストである。しかし、この店は大変繁盛している。なぜなら、この店は目立つと同時に、面白いものが格安で売っているからである。固定ファンも多く、若い女性も利用するから驚きだ。つまり、ドンキホーテは、「(下品だけど)目立つ → 客の興味をひきつける → 店内には面白いものがあるかつ安い」の、立派にマーケティングをしているのである。このあたり、学習塾はやはり遅れている。

学習塾が下品なのは困るが(笑)、保護者に「ここで勉強させたい!」、生徒に「ここで勉強してみたい!」と思わせるような、デザイン性に富んだ教室造りは、思わぬ集客効果、すなわちプロモーションになり得るのではないだろうか。一度、街に出て、おしゃれな美容室やホテルを覗き、そこで体感した、「いいなぁ」「また来たいなぁ」と思わせたデザインを、貴塾に取り入れることから始めてみてはいかがでろうか。くれぐれも、ごちゃごちゃした下品なデザイン(笑)には気をつけて。そして日々の授業レベルの向上は、お忘れなく。