学習塾業界における成熟市場の打開方法(後半)

前回は、ビジネス・マーケット・マトリックス(BMM)を使い、各企業を4つのマトリックスに当てはめてみた。今回は、更にその4つのマトリックスを細分化し、少子化(これは確定型未来)による市場縮小を前提にし、各戦術を考えてみる(下図)。なお、下図のBMMとツリーの各色は対応している。

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図表2.学習塾のビジネス・マーケット・マトリックス(BMM)を使った事例

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まず、一つは既存の市場で勝負する方法で、3つの戦術に分けられる。

価格競争

値下げができる企業は、業界のリーダークラスしかない。なぜなら、最終的には消耗戦になり、体力勝負になるからである。脆弱な財務体質や規模が小さい企業では、価格競争に巻き込まれたら一溜まりもない。また、予め低価格商品(授業)を開発し、市場に投入する方法もある。ユニクロやスーパーのPB(プライベートブランド)のように、低価格で質が良い商品は消費者に大人気である。

M&A

業界のリーダーは幅広い商品ラインを用意し、市場の全てのニーズを満たすフル・カバレッジをとることがある。そのために、M&Aはひとつの有効な手段である。しかし、M&Aは市場や財務面ばかりでなく、企業同士の文化が合ってはじめて成功をする。この辺がM&Aの難しさところだ。

ニーズの汲み取る

ここでは更に顧客(生徒・保護者)のニーズを汲み取り、新しい市場を作る。これに該当するのがリソー教育である。同社は、首都圏に進学型の個別指導を展開している。首都圏という既存の市場で、中学受験という顧客のニーズを読み取り、進学型の個別指導という新しい市場を形成した。だから、首都圏で中学受験かつ個別指導となれば、断然リソー教育が強い。少子化がまだ始まっていない首都圏、トレンドである個別指導、そして中学受験、同社のビジネスにはこの3つの強みがある。

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もうひとつは、対象市場・事業を他に求める方法で、4つの戦術に分けられる。

対象年代をずらす

幼児教育、大学生向け、資格などに進出する。予備校に多い展開パターンである。これはビジネス上の財産である高校生に対して、更にサービスを展開する狙いがある。また、幼児教育は近年徐々にシェアが大きくなり、、今後注目される市場である。

新市場を開拓する

地方や海外市場に進出。全国展開を狙う大手や、既に海外展開をしている公文がこれが当たる。ただし、教育はその地域、その国々で価値観が違うところが難しいところだ。その点公文は、読み書きや計算という万国共通な基礎学力をうたい、幅広い国で受け入られている。公文の海外売上比率は、同社売上高の3割をこす。

周辺領域へ拡大

周辺サービスと言おうか、強みである事業をひと回り視野を広げる方法である。例えば、家庭学習の支援や、ICTを使った補助教材などが該当する。客単価を上げるのに有効な手段であるが、コアである商品が脆弱だと全く意味をなさない。

新規事業に取り組む

いわゆる多角化で、これが一番難しい。なぜなら、自社の強みを新ビジネスに転換し、更にそれを新市場で発揮しなければならなく、ハードルが高いからである。

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まとめると、市場浸透は体力のある企業が有利であるが、地域密着型で地元から評判の良い塾なら戦い抜けるチャンスはある。流石に大手では、真の地域密着サービスは難しい。商品開発や市場開発は、事業ドメイン(強み)がある企業なら、一歩足を踏み入れてみてはいかがだろうか。そこには大きなビジネスチャンスがあり、ここでの覇者が将来の業界リーダーになることも十分あり得る。最後の多角化だが、あらゆる業界も見ても多角化での成功は稀な存在である。

多角化の有名な成功例として、GE(ゼネラル・エレクトリック)社がある。GEの歴史を振り返ると、家電、ジェットエンジン、原子力、医療機器、保険・金融など、様々な事業を展開してきた。GEの経営理念は「ゆりかごから墓場まで」であり、すべての事業分野で1位もしくは2位のみのシェアのみをビジネスの存在条件としている。中途半端な多角化はしていないのである。

是非この機会に、自社(塾)の今後の方向性を見出してみてはいかがだろうか。

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